当事者の自由な選択の結果である限り、裁判所などが契約に介入すべきではないという理念。
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
— 民法第1条2項
裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
— 民事訴訟法2条
裁判所は、家事事件の手続が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に家事事件の手続を追行しなければならない。
— 家事手続法2条
業務委託契約は、後述する請負契約や準委任契約を含む、自社の業務の一部あるいは全部を外部に依頼する契約全般のことを指す。
請負契約とは、期日までの仕事の完成 (例: 成果物の完成) を条件に報酬を支払う契約形態のことである。 指揮系統は受注者側にある。
発注者の協力義務
受注者が成果物の完成に義務を負う請負契約では、発注人の協力がなければ (例: 発注者が打ち合わせに参加しないなど) 受注者は不利益を被る。 そのため、受注者の仕事の完成における適切な役割を果たす義務が発注者にも課せられる。
完成した成果物の納品が条件となる請負契約において、成果物が期日までに納品されないか納品物が不完全とみなされる場合は契約不適合とみなされる。 契約不適合が生じたときの受注者の責任を契約不適合責任という。
契約の不適合がある場合、注文者に以下の権利が認められる。
代金減額請求権
受注者にも不適合の程度に応じて減額した報酬を注文者に請求する権利がある。
契約不適合による報酬の減額
どの程度の契約不適合でどの程度の報酬減額を認めるかについて、契約段階で予め合意しておくことが望ましい。
受注者の過失より注文者が損害を被った場合、注文者は受注者に損害賠償を請求できる。
損害賠償の範囲
損害賠償には債務不履行により逸失した利益 (逸失利益) も含まれる。
請負契約では、受注者から一方的に契約を解除することはできない。
発注者から請負契約を解除する場合は、発注者は完成した仕事の割合に応じて受注者に報酬を支払う義務を負う。
また、受注者から請負契約を解除することはできず、万が一契約内容に記された仕事の完成が不可能になった場合は契約不適合の扱いとなる。 よって、受注者は債務不履行による損害賠償を発注者に支払う義務を負う。
準委任契約 (システム開発契約におけるSES契約) は、事務処理行為 (殆どのケースで作業時間と読み替えてよい) に対して報酬を支払う契約。 指揮系統は受注者側にある。また、成果物の完成に対して責任を追わない。 (ただし、善管注意義務 (後述) を負う)
準委任契約と委任契約の違い
ソフトウェア開発の契約では使われないが、準委任契約とは別に委任契約という契約形態が存在する。 これは、準委任契約と同じく事務処理行為に対して報酬を払う契約であるが、事務処理が法律行為であることが場合の契約形態である。 (例: 弁護士の訴訟代理など)
参考: 民法第356条
受任者は善良なる管理者の注意義務をもって業務に当たらなければならない。
善管注意義務の程度は受任者の役割や能力によって異なる。 善管注意義務の例としてコンプライアンス義務がある。
受任者は自らの事務を処理する義務を負う。 また、事務処理上必要となる付随的な義務として、以下の3つが規定されている。
受任者は委任者の請求があった場合や委任契約が終了した場合には、業務の経過を報告しなければならない。
受任者は委任された業務を処理することで取得した金銭などを委任者に引き渡さなければならない。
受任者は委任者のために自分を主体として取得した権利も委任者に移転しなければならない。
発注者・受注者は双方の合意の上でいつでも準委任契約を解除できる。 ただし、一方にとって不利な時期に委任契約を解除する場合は、損害賠償義務が生じうる。
発注者が契約違反を事由に一方的に契約を解除をする場合は、まず
を行い、それでも改善が認められない場合は
の手順で契約の解除を行う。
業務の遂行を条件に、作業時間に対して報酬を支払う契約。指揮系統は発注者側にある。
派遣契約と準委任契約の違い
派遣契約は発注者 (派遣先) に指揮命令権があり、準委任契約は受注者にある。
登録型派遣と常用型派遣
派遣契約によって派遣される社員は登録型派遣社員と常用型派遣社員がある。
登録型派遣社員は、派遣先との派遣契約期間のみ派遣元と雇用契約を結ぶ、いわゆる派遣元の非正規社員である。 一方で常用型派遣社員は、派遣元とは期間を設けない無期雇用契約を結ぶ、いわゆる派遣元の正社員である。
よく勘違いされるが、派遣社員は必ずしも非正規社員ではない。
偽装請負とは、契約が請負契約や準委任契約であるにも関わらず、実態が労働者派遣として適正に管理すべき状況のことである。