インフルエンサーマーケティングというが流行している。 最近 SNS や YouTube のような動画投稿でもよく見かけるようになってきた。
インフルエンサーマーケティングは大きく 2 種類に分けることができる。
1 つは俳優や芸能人などの有名人がインフルエンサーとなって宣伝するタイプだ。
商品メリットの定量的な説明より、有名人が推薦することに重きを置くことで、そのファンにとってのブランド認知を高めようとすることが大きな特徴だ。
この手の宣伝は決して目新しくない。例えば、テレビ CM の芸能人起用はこれに該当する。 国会議員の選挙にしても同様で、選挙には三バンの揃った顔役が出馬し、当選すれば雇った政策秘書が提案をまとめることが珍しくない。
もう 1 つが成功者がインフルエンサーとなって宣伝するタイプだ。
与沢翼やホリエモンなど、億単位の所得をもつ億り人の商品プロデュースはこれに当たる。 最近よく見る「未経験からプログラマーになって月収○○万」というプログラミングスクールやオンラインサロンの宣伝も同様だ。
成功者というのは必然的に有名人にもなりがちなので、ある程度は有名人による宣伝行為と似ている。
しかし、成功者のファンはその成功者の成果に対するファンであり、成功者の人格に対するファンではないという点で、有名人による宣伝行為と根本が異なる。
例えば、俳優などの有名人による宣伝行為は、テレビ CM だけでも「CM でお気に入りの俳優が使っていた商品」というブランディング効果がある。 一方で、成功者による宣伝は、商品の実態が伴わなければ出演者ごと炎上する可能性が高い。
2012 年にペニオク詐欺事件という問題が発覚した。 ペニーオークションの運営者が詐欺罪で逮捕されると共に、複数の芸能人による同サービスのステマ (ステルスマーケティング) が発覚し、大きな問題となった。 出演者のファンとはいえ、商品の実態と著しくかけ離れた宣伝は、出演者の評判にも影響する。
現在も、YouTuber が自分のチャンネルに投稿した宣伝動画には「この動画はプロモーションを含みます」という注意書きが表示される。
インフルエンサーマーケティングの本質には、「定量的な商品宣伝は顧客に理解されない」という toC マーケティングの悲しい性質がある。 高度な情報社会において人間の情報処理リソースというのは非常に貴重で、機能する場面が限定的だ。 このような市場において、商品ブランドの認知度がシェアの大きな決定要因であることは間違いない。
しかし、商品の価値というのは商品を使用すれば遅かれ早かれ判明する。 商品の実態が伴わない宣伝は、やがては出演者や企業のブランドロイヤリティの損失として現れる。
そう考えると、高いコストを払ってインフルエンサーマーケティングを行うことが、本当に事業の成功の鍵 (KFS = Key Factor to Success) となり得るのかを熟考する必要がありそうだ。