よんログ

大企業かベンチャー企業か

就活相談で、「大企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきか」という質問をよく見かける。 自分の結論は「そのような軸で入社する会社を判断すべきでない」だ。

そもそもベンチャー企業の定義はなんだろうか。 明確な定義は存在しないが、一般には「新しいビジネスに挑戦する企業」とされている。 しかし、自称ベンチャー企業のほとんどは既存市場におけるフォロワーであり、会社が小規模であればベンチャー企業を自称する印象がある。

さらに「大規模でありながらベンチャー・マインドをもった会社」の意で「メガ・ベンチャー」という言葉もある。 こんなフワッとした定義なら、どの会社も「ウチはベンチャー企業だ」と言い張るだろう。

では、ベンチャー企業で働けば、仕事での裁量を得て若くしてキャリアを築けるのだろうか。 会社の立場になって考えてみよう。 会社にとって、経験が浅いメンバーに仕事の裁量を与えることは、明らかにリスクでしかない。 それにも関わらず、そのようなメンバーの裁量が大きいということは、実態が伴っていないか、あるいは要件を満たす人材を雇うだけの予算がなかったと考えるべきだろう。

つまり、ベンチャー・カルチャーとは一言で言ってしまえば「低予算文化」である。 裁量に見合う待遇は期待できないし、大企業で行うような教育研修も期待できない。 その会社でのワーク・ライフ・バランスも捨ててかかった方がいいだろう。

そもそも、「成長してキャリアを築いてどうなりたいのか」が重要だ。 ほとんどの人の本音は、「時給を上げたい」「稼げるようになりたい」だろう。ならば、ポジションや裁量を考える前に「そのキャリアの市場価値」を考えることが大事だ。 それは別のコラムで詳しく述べるとする。

注意すべきは、肩書きだけでキャリアを判断してはいけないということだ。 例えば、同じエンジニア職でも、扱うシステムの規模や要求レベルによって、技術スタックや品質保証に対する考え方が全く異なったりする。 すると開発手法やマネジメントまで変わる。 営業職の求人にも「数億規模の商談経験」が必須要件として記載されていることがあり、同じ営業職でも扱う商材の規模によってキャリアパスが異なることが分かる。

特に、新卒の就職活動は特別な意味をもっている。 それは、選んだ業界や会社でのロールが、今後のキャリアの大筋を決めてしまうことである。 30 代以降は、「転する機会」はいくらでも転がっているが、「転する機会」というのはほとんどない。 だから、もっと具体的な判断軸をもって考えてほしいと思う。