よんログ

マクロ経済学

マクロ経済政策の目標

  • 経済成長
  • 失業率の低下
  • インフレ率の低下
  • 持続可能な国際収支

失業率

失業の分類

自発的失業

景気の変動に関係なく、自己の意思で失業すること。景気の良し悪しとは無関係に存在する。

非自発的失業

現行の賃金で就職を望んでいるのも関わらず失業していること。 景気の変動による需要不足失業や、企業が求める人材と求職者の特性 (年齢, スキルなど) のミスマッチから生じる構造的失業がある。


構造的失業による失業者の割合を自然失業率という。

インフレーション

インフレーション (inflation) とは、物価がある期間において持続的に上昇する経済現象である。

CPI (Consumer Price Index, 消費者物価指数)

総務省が毎年発表する小売物価統計調査を基に作成される指標。

インフレーションの分類

ディマンドプル・インフレーション (demand-pull inflation)

需要の増大により、価格が高くても購買意欲が衰えないので物価が上昇する。

  • ex. 日本列島改造論による過剰な建設需要

コストプッシュ・インフレーション (cost-push inflation)

供給曲線の上方シフトにより物価が上昇する。多くの場合、経過が悪化し、雇用や賃金が悪化する中で物価の上昇が発生するスタグフレーション (stagflation) になる。

  • ex. オイルショック

国際収支

BPM6 準拠の方式では、国際収支は大まかに以下に分けられる。

  • 経常収支
  • 資本移転等収支
  • 金融収支

国際収支について以下の関係式が成り立つ。

経常収支+資本移転等収支+誤差脱漏=金融収支\text{経常収支}+\text{資本移転等収支}+\text{誤差脱漏}=\text{金融収支}

経常収支

経常収支は以下の関係式が成り立つ。

経常収支=貿易収支+サービス収支+第一次所得収支+第二次所得収支貿易収支=輸出輸入第一次所得収支=雇用者報酬+投資収益+その他第一次所得\begin{aligned} \text{経常収支}&=\text{貿易収支}+\text{サービス収支}+\text{第一次所得収支}+\text{第二次所得収支}\\\\ \text{貿易収支}&=\text{輸出}-\text{輸入}\\\\ \text{第一次所得収支}&=\text{雇用者報酬}+\text{投資収益}+\text{その他第一次所得} \end{aligned}

金融収支

金融収支について、以下の関係式が成り立つ。

金融収支=直接投資+証券投資+金融派生商品+その他投資+外貨準備\text{金融収支}=\text{直接投資}+\text{証券投資}+\text{金融派生商品}+\text{その他投資}+\text{外貨準備}

総需要と総供給

GDP

一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額をGDP (Gross Domain Product, 国内総生産) という。

GDPは生産面から見ても、分配面 (所得) から見ても、支出面から見ても必ず同じ値になる性質をもつ。 このことを三面等価の原則という。

GDPについて以下の関係式が成り立つ。

GDP=C+I+G+XMC:消費I:投資G:政府支出X:輸出M:輸入\begin{aligned} \text{GDP}&=C+I+G+X-M\\\\ C&:\text{消費}\\\\ I&:\text{投資}\\\\ G&:\text{政府支出}\\\\ X&:\text{輸出}\\\\ M&:\text{輸入} \end{aligned}
実質GDP

GDPはインフレによる価格変動によっても変動してしまう。 価格変動の影響を受けるGDP (名目GDP) に対して価格変動の影響を排除したGDPを実質GDPという。 このとき、実質GDPを名目GDPで割った値をGDPデフレータといい、インフレの程度を表す物価指数の1つとして見ることができる。

潜在GDP

資本や労働が最大限に利用されると達成できる、長期間維持可能なGDPの最高水準を潜在GDPという。 潜在GDPが達成されているとき、需要不足失業による失業者はゼロになる。よって潜在GDPのことを完全雇用GDPともいう。

総供給

総供給を変化される主な要因は 2 つある。

  • 技術の進歩
  • 生産条件の急激な変化

新古典派経済学

セイの法則

セイの法則は、需要を増やすには供給を増やせばよいという考え方である。 このような考え方を支持する立場は、新古典派経済学と呼ばれている。

非貨幣市場の総供給と総需要が常に一致する

セイの法則は、現代では好況などで潜在需要がある場合や、戦争などで市場供給が過小な場合などに限定的に成り立つものと考えられている。

ケインズ経済学

有効需要の原理

有効需要の原理は、市場では価格調整が行われるのではなく、高需要な財の生産数量を増やす数量調整が行われるという考え方であり、ケインズ経済学の根幹である。 よって、ケインズ経済学は上記のセイの法則とは相対する。


価格の変更には市場調査や競合調査のコスト (メニュー・コスト) がかかる
→ 企業は価格の変更に対して慎重になる
短期的には総需要が重要 (有効需要の原理)
長期的には総供給が重要 (セイの法則)

貨幣の役割

  • 価値の尺度 (貨幣は財やサービスの交換価値を客観的に表す)
  • 支払 (債務を決済する)
  • 価値の貯蔵 (財やサービスと貨幣を交換することで、その価値を貯蔵できる)
  • 価値の媒介 (貨幣を介さない等価交換では、相手が自分の欲しい財やサービスをもち、かつ自分が相手の欲しい財やサービスをもつ状況 (欲求の二重一致) でしか取引が成立しない 財やサービスと貨幣を介して相互に交換することで、取引を円滑に行える。)

日本銀行の役割

  • 発券銀行として日本銀行券を発行し管理する (発券銀行としての役割)
  • 金融政策を実施し、通貨流通量を調整することで、物価と国民経済を安定させる
  • 日本銀行の当座預金を使って金融機関同士の取引を決済する (銀行の銀行としての役割)
  • 国庫金を出納をする (政府の銀行としての役割)
  • 破綻した金融機関に対して、預金者保護を目的に、無担保で融資する (最後の貸し手としての役割)

金融政策

金融政策とは、中央銀行が金融面から行う政策のことで、下記の目的をもつ。

  • 信用秩序
  • マクロ経済の安定
    • 物価の安定 → 一般物価を適当な上昇率に調節し、インフレーション, デフレーションを解消する
    • 雇用の安定 → 非自発的失業率を 0 に近づける

特に、不況時の金融緩和によって、金融緩和 → 実質金利低下 → 投資・消費の拡大 → GDP の増大 といったメカニズムが働くことを期待する。 これは、金融緩和の下記の諸効果に大きく依存する。

  • ケインズ効果 (実質金利の低下に伴い、将来の予想実質金利が低下する)
  • 資産効果 (実質金利の低下に伴い、投資・消費がする)

具体的な政策

公定歩合操作

中央銀行が民間銀行に資金を貸す時の金利 (政策金利) を変化させることで、民間銀行が中央銀行から資金の貸し借りを調整する。 1994年までの日本では、民間銀行の金利 (公定歩合) は政策金利に連動するように規制されていたため、政策金利を変動させることは日本の市中金利を操作することに等しかった。 1994年に民間銀行の金利が自由化されたことで、公定歩合操作はできなくなった。

公開市場操作

中央銀行が金融市場で、流注してる債権を売買する。 中央銀行が銀行から国債などを買う (買いオペ) と、代金が中央銀行から銀行に支払われ、通貨量が増える。 資金供給量が増えると金利が下がり、企業や個人が資金を調達しやすくなる。 同様に中央銀行が銀行に国債などを売る (売りオペ) と、代金が銀行から中央銀行に支払われ、通貨量が減る。

分類

伝統的金融政策

  • 短期名目金利の引き下げ
  • 将来の名目金利引き下げについての告知
  • 自国通貨の減価

非伝統的金融政策

  • 物価水準目標の導入
  • マイナス金利の導入
  • 公開市場操作のオペ対象資産の拡大

伝統的金融政策では金利を 0 以下に引き下げることはできないため、それ以上の金融政策には非伝統的金融政策が必要となる。 金融資産や貨幣に対してマイナス金利を適用することは、保有税の導入に等しい。


参考文献