インターネット広告はデジタル・トランスフォーメーションを背景に急成長を続けている。
2017 年には、インターネット広告市場がテレビ広告市場を世界的に上回った。
その背景には次のような理由があると考えられる。
- 消費者がインターネットに費やす時間が増えた
- 低コストで効果的
- きめ細かな効果測定ができる
- 出稿作業を自動化できる
配信方法による分類
コンテンツ連動型広告
コンテンツ連動型広告は、広告が配信される Web サイトにどんなキーワードがあるかを自動抽出し、それらにあった広告配信を行う手法のこと。
リターゲティング広告
リターゲティング広告は閲覧者の行動履歴から興味関心を推測することで、ターゲットを絞って広告配信を行う手法のこと。
サイト内での行動分析
会員制のサイトでは、会員 ID を識別子としてログイン中の行動履歴を集計できる。
会員制でないサイトでも、Cookie を利用して閲覧者の識別子を発行することで、閲覧者の行動履歴を集計できる。
アドネットワーク内での行動分析
広告の配信媒体が多数の Web サイトに広告を配信する場合、それらが形成するネットワーク (アドネットワーク) から、閲覧者がどのような Web サイトを訪れているかを追跡できる。
閲覧者の識別には携帯電話の固有者 ID や Cookie などが使われる。
アドネットワーク内での行動追跡で用いられる、閲覧サイトと Cookie の発行元が異なる Cookie を 3rd Party Cookie という。
3rd Party Cookie は GDPR (EU) や CCPA (アメリカ, カリフォルニア州), 個人情報保護法 (日本) のような法令面から排除される流れとなっている。
Google は Chrome での 3rd Party Cookie のサポートを 2022 年に打ち切る計画を発表した。
Safari は ITP (= Intelligent Tracking Prevention) は 3rd Party Cookie を利用した行動追跡を阻止する。
リスティング型広告
リスティング広告は検索エンジンで、閲覧者が検索したキーワードに関連した広告を表示する手法のこと。
課金方法による分類
- 期間保証型
- 掲載期間に対して課金。
- 回数保証型
- 広告が表示される回数に対して課金。
- クリック報酬型
- 広告がクリックされた回数に対して課金。
RTB
RTB(= Real-Time Bidding, リアルタイムビディング) は広告スペースにどの広告を出すかを、広告の表示毎にオークションを行って決定する仕組み、またはそのためのプロトコルのことである。
IAB (Internet Architecture Board) によって OpenRTB というプロトコルの標準仕様が定められている。
広告スペースのオークションは、広告配信媒体の利得を最大化する SSP (= Supply-Side Platform) と、広告主の利得を最大化する DSP (= Demand-Side Platform) が RTB を使って取引することで行われる。
具体的には以下の手順で行われる。
- 閲覧者が Web ページにアクセスすると、Web サイトから SSP に広告がリクエストされる。 (Ad Request)
- SSP は提携している複数の DSP に RTB で広告スペースを入札するようリクエストする。 (Bid Request)
- DSP は SSP に広告スペースの入札価格を返す。入札価格が 0 円の場合は入札しない。 (Bid Response)
- SSP は最も高い入札価格を提示した DSP に落札通知 (Win Notice) を返す。
他の入札に参加した DSP には落札失敗通知 (Loss Notice) を返す。
- SSP は広告スペースを落札した DSP の広告配信タグを Web サイトに返す。
- Web サイトは SSP から受け取った DSP の広告配信タグをレンダリングする。
- DSP の広告配信タグがレンダリングされると DSP に広告がリクエストされる。
- DSP は落札した広告スペースで表示する広告を Web ページに返す。
広告の効果を測る指標
- インプレッション (impression, imp) 回数
- 広告が表示された回数
- リーチ (reach)
- 広告を伝達した閲覧者の数
- クリック回数
- 広告がクリックされた回数
- コンバージョン (conversion) 回数
- 成果 (ex. 会員登録, 資料請求, 商品の購入) に繋がった回数
- CTR (Click Through Rate)
- インプレッションに対するクリック回数の割合
- CVR (ConVersion Rate)
- クリック回数に対するコンバージョン回数の割合
- CPM (Cost Per Mile)
- 1,000 インプレッション当たりの広告費用
- CPC (Cost Per Click)
- 1 クリック当たりの広告費用
- CPA (Cost Per Acquisition)
- 1 コンバージョン当たりの広告費用
- ROAMS (Return ON Advertising Spend)
- 広告費用に対する広告効果による売上の割合
インターネット広告の問題
- viewable impression 問題
Web
ページのスクロールなどの都合で閲覧できない状態にある広告が、閲覧できる状態にある広告のインプレッション
(viewable impression) としてカウントされてしまう問題。
- アドフラウド (ad fraud, 詐欺広告) 問題
bot
などを使ってインプレッションやクリックを行うことで、広告費用を水増し請求する行為。
広告配信媒体が回数保証型やクリック報酬型などの課金方法を採っている場合は大きな問題となる。
- ブランドセーフティ問題
ブランドイメージを毀損してしまう Web サイ トに広告を配信してしまう問題。
参考文献
- 藪本 晃輔, 稼げるエンジニアになるためのインターネット広告⼊⾨, 2018
- IT のプロ 46, IT エンジニアのための【業務知識】がわかる本 第 5 版, 2018
- Wikipedia, インターネット広告
- Wikipedia, コンテンツ連動型広告
- Wikipedia, 行動ターゲティング広告
- Wikipedia, 検索連動型広告
- Wikipedia, アドネットワーク
- Wikipedia, リアルタイムビディング
- Wikipedia, Supply-side platform
- Wikipedia, Demand-side platform