前提知識
テイラー展開
テイラー展開 (Taylor expansion) は、関数のある一点での導関数たちの値から計算される項の無限和として関数を表したものである。
f(x)=f(a)+f′(a)(x−a)+2!1f′′(x)(x−a)2+3!1f′′′(a)(x−a)3+…=n=0∑∞n!1f(n)(a)(x−a)n
特に a=0 のときのテイラー展開をマクローリン展開 (Maclaurin expansion) という。
f(x)=n=0∑∞n!1f(n)(0)xn
テイラー展開 (マクローリン展開)
をすることによって、複雑な関数を多項式で表せる。
オイラーの公式
以下の関係式をオイラーの公式 (Euler's formula) という。
eiy=cosy+isiny
特に θ=π のとき
eiπ+1=0
が導かれ、この関係式をオイラーの等式 (Euler's identity) という。
オイラー公式を用いれば、複素数の極座標表示は
z=r(cosθ+isinθ)=reiθと表される。
cosθ,sinθ をそれぞれマクローリン展開すると
cosθsinθ=1−2!1θ2+4!1θ4−6!1θ6+⋯=θ−3!1θ3+5!1θ5−7!1θ7+⋯(1)ex をマクローリン展開すると
ex=1+x+2!1x2+3!1x3+4!1x4+5!1x5+6!1x6+7!1x7+⋯(2)(2) に x=iθ を形式的に代入すると
eiθ=1+iθ−2!1θ2−3!1iθ3+4!1θ4+5!1iθ5−6!1θ6−7!1iθ7+⋯=(1−2!1θ2+4!1θ4−6!1θ6+⋯)+i(θ−3!1iθ3+5!1iθ5−7!1iθ7+⋯)=cosθ+isinθ
ε-δ論法
定義
関数 f(x) は x=a で連続であるとは
x→alimf(x)=b
が成り立つことである。
これをε-δ論法で定義すると
∀ε>0,∃δ>0 s.t. ∀x∈R,∣x−a∣<δ⇒∣f(x)−b∣<ε
となり、これは
任意の正の数 ε に対し、ある適当な正の数 δ が存在して、δ<∣x−a∣ を満たす全ての実数 x に対し、∣f(x)−b∣<ε が成り立つという意味の条件である。
ガウス積分
定義
∫−∞∞e−x2dx=π
I=∫−∞∞e−x2dx とおく
I2=(∫−∞∞e−x2dx)(∫−∞∞e−x2dx)=∫−∞∞∫−∞∞e−(x2+y2)dxdyx=rcosθ,y=rsinθ とおく
I2=∫02π∫0∞e−r2{π(r+dr)2×2πdθ−πr2×2πdθ}=∫02π∫0∞e−r2(rdrdθ+21(dr)2dθ)=∫02π∫0∞e−r2rdrdθ=∫02πdθ∫0∞re−r2dr=2π[−21e−r2]0∞=πI>0 なので
I=π
双曲線関数
定義
sinh(x)cosh(x)tanh(x)=2ex−e−x=2ex+e−x=ex+e−xex−e−x
性質
双曲線関数は三角関数に似た性質をもっている。
cosh2x+sinh2xtanhx1−tanh2x(sinhx)′(coshx)′(tanhx)′∫−∞∞e−x2dx=1=coshxsinhx=cosh2x1=coshx=sinhx=cosh2x1=π
オイラーの公式 eiθ=cosθ+isinθ を用いて、三角関数 cosθ,sinθ を表すと
cosθsinθ=2eiθ+e−iθ=2ieiθ−e−iθとなり、双曲線関数と式の形が似ているため。
ロピタルの定理
定義
limx→a が
00 か
±∞±∞
の不定形であり、次の条件をすべて満たすとき
- limx→af(x)=limx→ag(x)
が 0 または ±∞
- a を含むある開区間から a
を除くすべての点で g′(x)=0
- 極限 limx→ag′(x)f′(x)
が存在する
このとき、極限 limx→ag(x)f(x)
も存在し
x→alimg(x)f(x)=x→alimg′(x)f′(x)
が成り立つ。
例題
- limx→0xx+sinx
- limx→∞exx
- limx→0x+sinxsin2x
- limx→0x3x−sinx
フーリエ解析
フーリエ級数展開
ある関数 f(x) の性質が知りたい場合、より基本的な関数系 {φ0(x),φ1(x),φ2(x),…} で級数展開する。
f(x)=n=0∑∞cnφn(x)
-
f(x) が無限回微分可能な場合
→ {1,x,x2,x3,…} で級数展開 (マクローリン展開)
f(x)=n=0∑∞n!f(n)(0)xn
-
f(x) が周期関数である場合
→ {1,cosx,sinx,cos2x,sin2x,…} (三角関数系) で級数展開 (フーリエ級数展開)
f(x)=a+n=1∑∞(ancosnx+bnsinnx)
級数展開に三角関数を使う利点は、直交性 (自身以外との内積が 0) であること。
f(x),g(x) を周期 2π の周期関数とすると、その内積は
∫−ππf(x)g(x)dxで定義される。
==∫−ππsinmx⋅sinnx∫−ππ2cos(m−n)x−cos(m+n)xdx{0π(m=n)(m=n)同様に
∫−ππcosmx⋅cosnx∫−ππcosmx⋅sinnx={0(m=n)π(m=n)=0また、三角関数と 1 との直交性は自明である。
フーリエ係数
2a0+n=1∑∞(ancosnx+bnsinnx)an=π1∫−ππf(x)cosnxdxbn=π1∫−ππf(x)sinnxdx
このような形で表される級数を f(x) のフーリエ級数といい、an,bn をフーリエ係数という。
f(x)=a+n=1∑∞(ancosnx+bnsinnx)(1)(1) の両辺に cosmx をかけて、[−π,π] で積分する。
∫−ππf(x)cosmxdxam=∫−ππacosmxdx+n=1∑∞∫−ππ(ancosnxcosmx+bnsinnxcosmx)dx=πam=π1∫−ππf(x)cosmxdx同様に、(1) の両辺に sinmx をかけて、[−π,π] で積分する。
∫−ππf(x)sinmxdxbm=∫−ππasinmxdx+n=1∑∞∫−ππ(ancosnxsinmx+bnsinnxsinmx)dx=πbm=π1∫−ππf(x)sinmxdx同様に、(1) の両辺を積分すると
∫−ππf(x)dxa=∫−ππadx+n=1∑∞∫−ππ(ancosnx+bnsinnx)dx=2πa=2π1∫−ππf(x)dxよって
anbna=π1∫−ππf(x)cosnxdx=π1∫−ππf(x)sinnxdx=2π1∫−ππf(x)dx=2a0
複素フーリエ級数
n=−∞∑∞cneinxcn=2π1∫−ππf(x)e−inxdx
cn の性質
f(x) が実関数であるとき、c−n=cn∗ が成り立つ。
{einxe−inx=cosnx+isinnx=cosnx−isinnxより
cosnxsinnx=2einx+e−inx=2ieinx+−−inx==2a0+n=1∑∞(ancosnx+bnsinnx)2a0+n=1∑∞(2an−ibneinx+2an+ibne−inx)n=−∞∑∞cneinx
ライプニッツの法則
ライプニッツの法則は、f,g を n 回微分可能な関数としたときの、それらの積 f⋅g の n 階微分の一般化である。
定義
(f⋅g)(n)=k=0∑nnCkf(n−k)g(k)
sup, inf
定義
A を空でない実数 R の集合とする。
max
maxA=α⇒A の最大値は α
- 任意の x∈A に対して x≤α (α は A の上界)
- α∈A → α も A に入っていけなければならない
sup
supA=α⇒A の上限は α
- 任意の x∈A に対して x≤α
(α は A の上界)
- α より小さい任意の実数 β に対し β<x なる x∈A が存在 → α 自体は A に入ってなくてもよい
同様に
minA=αinfA=α⇒A の最小値は α⇒A の下限は α
性質
- supA∈A⇒supA=maxA
- A が上に有界⇒supA が存在
- infA∈A⇒infA=minA
- A が下に有界 ⇒infA が存在
ガンマ関数
定義
Γ(s)=∫0∞xs−1exp(−x)dx(s>0)
性質
s>1 のとき
Γ(s)=(s−1)Γ(s−1)
Γ(s)=∫0∞xs−1e−xdx=[xs−1(−e−x)]0∞+∫0∞(s−1)xs−2e−xdx=(s−1)Γ(s−1) s が正の整数のとき
Γ(s)=(s−1)!s が正の整数のとき Γ(s)=(s-1)! となる証明
Γ(s)Γ(1)∴Γ(s)=(s−1)Γ(s−1)=(s−1)(s−2)Γ(s−2)=(s−1)(s−2)(s−3)⋯1⋅Γ(1)=∫0∞e−xdx=[−e−x]0∞=1=(s−1)! - Γ(21)=π
Γ(21)=∫0∞x−21e−xdxここで x=t2 とおくと
dx=2tdtxt0→∞0→∞より
Γ(21)=∫0∞t−1e−t2⋅2tdt=2∫0∞e−t2dt=∫−∞∞e−t2dtとなり、ガウス積分より
Γ(21)=π
ラグランジュの未定乗数法
条件 g(x,y)=0 下での f(x,y) の極値を考える。
f(x,y),g(x,y) が C1 級であるとき、条件付き極値をとる点の候補は
- ∇g(x,y)=0∧g(x,y)=0
- ∇f(x,y)=λg(x,y)∧g(x,y)=0 (ラグランジュの未定乗数法, method of Lagrange multiplier)
を満たす点である。
以上の条件は、条件付き極値となるための必要条件であり、十分条件ではない。
参考文献
- 井上 満, 工業数学がわかる, 技術評論社, 2010
- Wikipedia, オイラーの公式
- Wikipedia, イプシロン-デルタ論法
- Wikipedia, ロピタルの定理
- Wikipedia, 一般のライプニッツの法則
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】ガウス積分の証明【解析学】, 2017
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】双曲線関数とは何か【解析学】, 2017
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】テイラー展開の気持ち【解析学】 - YouTube, 2017
- ヨビノリたくみ, ロピタルの定理 ①(定理と使用例), 2020
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】フーリエ解析入門 ①(フーリエ級数展開 I)/全 5 講【解析学】, 2017
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】フーリエ解析入門 ②(フーリエ級数展開 II)/全 5 講【解析学】, 2017
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】フーリエ解析入門 ③(フーリエ級数展開 III)/全 5 講【解析学】, 2020
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】フーリエ解析入門 ④(フーリエ級数展開 IV)/全 5 講【解析学】, 2020
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】sup と inf(上限と下限)【解析学】, 2018
- ヨビノリたくみ, 【大学数学】ガンマ関数 ①(定義と性質)【解析学】, 2019
- ヨビノリたくみ, ラグランジュの未定乗数法の気持ち【条件付き極値問題】, 2021